心臓リハビリテーション Cardiac rehabilitation

心臓リハビリテーションについて

心臓リハビリテーション(以下心リハ)は、入院や死亡のリスクを減らす効果が証明されています。

残念ながら、一度ダメージを受けた心臓というのは、完全に元の状態に戻ることは出来ないと言われています。
とはいえ、もしあなたが心臓を患った方だったとしても、きっといまは普通に日常生活を送れているのではないでしょうか。
では、これからはどうでしょうか?いまと同じ状態を維持し続けることが出来ているでしょうか?
心リハは、あなたの心臓を過去に戻すことは出来ませんが、これからを守っていくために、とても有効なことが分かっています。

画像:心臓リハビリテーションについて
なにも症状がないから大丈夫?本当にそう?
画像:なにも症状がないから大丈夫?本当にそう?

もしあなたが、心不全を起こしたり、心臓カテーテル治療を受けたり、心臓手術を受けたのであれば、ぜひ心リハに参加して頂きたいです。
注意して頂きたいのは、何も症状がないからといって、心臓が大丈夫とは言い切れないのです。
症状だけでは分からないのが心臓の怖いところなのです。

例えば、車のエンジンが、なんらかの事故でゆがんでしまったとします。
もしかしたらビスがゆるんでいるかも知れません。
その状態で、気付かずフル回転で走り続けると、どうなってしまうでしょうか?
考えただけでも恐ろしいです。

ダメージを受けたところは、直せるところは直します。
でも直りきらない場合は、それに合わせた走り方をしないと、とんでもないことになります。

あなたの大事な心臓を、エンジンに例えてしまって申し訳ありません。
でも心臓も同じなのです。メンテナンスとつき合い方がとても大事なのです。

歩けているのにリハビリするのですか?

たぶん皆さんがお持ちのリハビリのイメージと、心リハとは少し違います。
心リハでは運動だけではなく、その他にもいろいろなことを行います。

下の図は心リハで行う5本柱です。

図:心リハで行う5本柱

心リハで行う5本柱

1.運動

運動は不整脈や血圧にも注意しなければならないので、専門知識を持つ私たちの前で、運動をして頂くと安全です。
その上で、ご自宅でも安全に運動が出来るように、お一人お一人にあわせた、安全かつ有効な運動強度を決定します。
みんなで和気あいあいと運動すると楽しいですよ!

画像:1.運動

2.食事

バランスのとれた食事と、適切なカロリーや塩分は、血圧改善や、血糖、コレステロールなどの改善につながり、病気の進行を防ぎます。
食事は毎日のこと。身体にいい食事を続けていくことが、あなたの身体を守るためには重要です。
制限ばかりじゃ楽しくありません。おいしく食べて笑顔になれるような食事内容を考えていきましょう。

画像:2.食事

3.ストレス管理

ストレスは、心不全や心筋梗塞、不整脈などの原因になることが分かっています。
心臓病の予防には、いかにストレスを軽くするかも重要なことです。
心リハ仲間とおしゃべりしたり、私たちスタッフとの会話を通して気持ちを共有できるといいですね。

画像:3.ストレス管理

4.病気の知識と自己管理

あなたご自身にも病気のことを知って頂きたいと考えています。
日常生活の過ごし方、病気とのつき合い方を知って頂きたいのです。このことが病気の悪化予防につながります。
また、日々の体調をご自身でも管理出来るようになって頂きたいと思っています。そうすることで、悪化の前兆に早くから気付き、早期治療、入院回避につながります。

画像:4.病気の知識と自己管理

5.禁煙

誰もが禁煙が大事なことは分かっているかと思います。
「そう言うけどな、止められないんよ。」そのお気持ちはよく分かります。
私たちは粘り強く、あなたが禁煙出来るように応援し続けます。
このように、心リハは運動だけを行う場所ではありません。
私たちは、あなたの心臓を守るために多方向から関わっていきます。

画像:5.禁煙

心リハで得られる効果

心リハの効果は、既にいくつもの信頼のおける大規模臨床試験で証明されています。
書ききれないほど多くの効果が報告されているのですが、下記はその一部です。

心不全の予後改善効果

慢性心不全患者さんに対する運動療法は、心臓死や心不全再入院を有意に減少させました。
(Belardinelli R, et al: Circulation 1999; 99: 1173-1182)

図:心不全患者の心臓死に及ぼす運動療法の影響

心不全患者の心臓死に及ぼす運動療法の影響

虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)の予後改善効果

心リハは通常治療に比べて、心血管病による総死亡率が20%減少し、心死亡を26%減少させました。
(Taylor RS, et al: Am J Med 2004; 116: 682-692)

図:冠動脈疾患患者に対する心臓リハビリの予後改善効果

冠動脈疾患患者に対する心臓リハビリの予後改善効果

その他の効果

その他にも次のような効果も報告されています。

  • 運動能力・体力の向上
    運動しても疲れにくくなり、最大運動能力も増えます。
  • 筋肉の質と量の改善
    疲れにくく、心臓にとって良い筋肉に変わります。
  • 心機能の改善
    心臓からの血液の拍出が良くなります。
  • 血管機能の改善
    血管がひろがりやすくなり、血液の循環が良くなります。また動脈硬化が進みにくくなり、血管の壁にへばりついたプラーク(コレステロールなどの塊)も小さくなります。
  • 血糖・コレステロールの改善
    運動や食事療法などにより、体の代謝が良くなり血糖やコレステロールなどのコントロールが良くなります。
  • 血圧改善
    血管の働きや代謝が改善することで、血圧も改善します。
  • 不安・抑うつ症状の改善
    心筋梗塞後の患者さんのおよそ2人に1人は、何らかの不安や抑うつを抱えていると言われています。心リハを受けることで、約60%の患者さんの抑うつが改善したと報告されています。また、仕事や家庭生活、社会生活の満足度が高くなるとも報告されています。
学会からも推奨される心リハ

日本循環器病学会の「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン2021改訂版」では、以下のような指針を出しています。

  • 心筋梗塞後の患者さんに、積極的に心リハを行う。
  • 安定狭心症で心臓カテーテル治療を受けた患者さんに、禁忌でないかぎり心リハを行う。
  • すべての心不全患者さんに、禁忌でない限り心リハを行う。

この推奨度はいずれも、クラスⅠエビデンスレベルAです。
つまり、複数の信頼のおける大規模臨床試験で有効であるというエビデンス(証拠)が確立されているもので、最も推奨レベルの高いものです。

私たちと一緒に心リハやっていきましょう!

このように良い効果が証明されているにも関わらず、実際、あまり周知されていないのが現状です。
事実、心不全で退院した患者さんの、およそ7%程度にしか外来心リハを行えていません。
(Kamiya K, et al. Circ J 2019; 83: 1546-52)

なぜでしょうか?
色々理由はありますが、心リハについてまだまだ啓蒙不足なのだと思います。
さらに、そもそも通院したくても心リハが出来る施設が、まだまだ少ないことも一因です。

心リハの役割は、運動だけではなく多面的に介入していかなければいけませんので、ある程度のノウハウが必要です。
心リハが出来る施設が少ないのは、そういった理由もあるかと思います。

私たちは、この地域で心リハが出来る施設を作りました。
私は心臓リハビリテーション指導士として、北播磨総合医療センターで心リハ部門の責任者として携わってきました。そして西神戸医療センターでも心リハを立ち上げ、責任者として携わってきました。
この経験をいかして、地域の皆さんに心リハをご提供したいと思います。
私たちはあなたの心臓を守りたいと思っています。
あなたとともに二人三脚で共に歩んでいきたいと思っています。
是非、心リハの扉を叩いて下さい。

画像:私たちと一緒に心リハやっていきましょう!

心リハの対象疾患

医療保険制度で、現在認められているのは下記のとおりです。
ご自分が当てはまるかご不明な場合は、お気軽にご相談下さい。

  • 心不全
  • 狭心症、心筋梗塞
  • 心臓手術後
  • 大血管疾患
  • 不整脈
  • ペースメーカー植え込み後
  • 肺高血圧
  • 末梢動脈閉塞性疾患
  • 経カテーテル大動脈弁置換術後(TAVI)

など